【感想】人類最古の物語『ギルガメシュ叙事詩』現代に通じるエモさ【あらすじ/登場人物】

こんにちは、元ネタに触りたがる系のオタクです。

今回も結構不純な動機なのですが、2020年2月現在、アニメで「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」が放送中じゃないですか。
いいですよね、バビロニア。元々FGOの中でも大好きなエピソードですが、アニメはフルボイスかつ超絶作画すぎて毎週目からエヌマエリシュです。
ちなみに「バビロニア」は筆者の心の友dアニメストアでも配信されているため、是非見ーてーねー!!!(ダイレクトマーケティング)

……と、きっかけはそんな感じで、学生時代に触れたきりだった『ギルガメシュ叙事詩』をなんとなくもう一度ちゃんと読もうと思い、……早速読んでみました!
読んだのは、月本昭男『ギルガメシュ叙事詩』(1996年岩波書店)です。


エモい

くっそエモいよこの最古の物語

「生と死」は人間の永久のテーマであると思いますが、それを超えた何かしらの文学的な感動があります。
大学の時も読んで感動はしたけど、今ほどじゃなかったような。

人生の……厚みが……増したのかな……(とても分厚いオブラート)

多分ですけど、月本先生の訳が物凄く良いおかげでもある。
というか普通に解説読んでても感動します。筆が立ちすぎて。
何これ?名文連発なんですが。

Q.この記事は本の感想なのか叙事詩の感想なのかどっちなの?

A.どっちもです

というわけで、全体的にとっ散らかってますが、優しくしてあげてください。
当記事では、「Fate」での「エルキドゥ」ではなく、「エンキドゥ」と表記しております。

あとこの記事は結構ふざけたことを書いていますが、万一何某かの違和感があった場合、原典や、読ませていただいた本には一切責任が無いことです。
悪いのはたわけ!

※間違っていたり解釈を間違えていたりしたら怖いので、ここに書いてある情報をレポートとか卒論に使うのはやめた方が良いです。

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ギルガメシュ叙事詩とは何ぞや

ギルガメシュ叙事詩は、古代メソポタミアにおそらく実在していたと思われる王、ギルガメシュを主人公とした物語です。
色んなバージョンがあり、書いてあることも少しずつ違っていますが、「標準版※」(前12世紀頃)と呼ばれるものが一般的に良く知られているようです。

※標準バビロニア語で書かれたもの

ざっくり登場人物

ギルガメシュ(ビルガメス)……前2600年ごろのシュメル初期王朝におそらく実在したとされる王。物語中では3分の2が神とされているが、人間として描かれている。イケメン。
エンキドゥ……ギルガメシュの親友。元々はギルガメシュの暴君ぶりを止めるために作られたが、殴り合いの末に友情が芽生える。
シャムハト……野人だったエンキドゥを人間にする娼婦。
シドゥリ……ギルガメシュが旅の途中で出会い、ウトナピシュティムに会う道を教えてくれる。
フンババ(フワワ)……杉の森を守る万人。ギルガメシュとエンキドゥの2人に殺される。
イシュタル(イナンナ)……愛と戦争の女神。ギルガメシュに言い寄るが、拒否されて怒り狂い、天牛グガランナを送り付ける。
シャマシュ(ウトゥ)……太陽神。ギルガメシュを加護している。
エンリル(ヌナムニル)……風と嵐の神。人類に厳しい。
エア(エンキ)……知恵と水の神?基本人間に優しく、何かと助けてくれる。
ウトナピシュティム(ジウスドラ)……洪水神話の当事者。大洪水を生き延びて不老不死となった。

3分間でふんわり読んだ気になれるあらすじメモ

読みながら取ってたメモです。(油断してると読んだ内容を5秒で忘れちゃうので……)
内容は標準版が元になってます。

第一の書板

1 「深淵を覗き見た人」ギルガメシュの讃歌から始まる
2 ギルガメシュの暴君ぶりが描かれる。ウルクの民の訴えによって、野人エンキドゥが造られる。
3 狩人がシャムハトを連れてエンキドゥの元へと向かう。
4 シャムハトと交わったエンキドゥは人間性を得る。
5 ギルガメシュが夢を見る。
6 ギルガメシュが見た2つの夢を母が解釈する。エンキドゥが「アヌの結び目」や斧の姿で表される。

第二の書板

1 エンキドゥが服を着たり食事をするなどして更に人間らしさを得る。
2 エンキドゥがウルクの町に入り、ギルガメシュと戦う。
3 大部分が欠損している。
4 ギルガメシュとエンキドゥの間に友情が芽生える。ギルガメシュが、何故泣いているのかエンキドゥに問うところで欠損している。
5 フンババの恐ろしさを語るエンキドゥ。それ以降は欠損。
6 ギルガメシュを止めようとする長老たち。

第三の書板

1 神殿に行き、フンババ討伐に向かうと告げる。
2 シャマシュに祈る母ニンスン。
3 大部分欠損。
4 護符を受け取るエンキドゥ。
5 欠損。
6 ?

第四の書板

1 フンババの森に向かう2人。ギルガメシュの夢見。
2 〜4 道中の休憩とギルガメシュの夢見。
5 欠損箇所大。シャマシュへの祈り?
6 友情の意義を説く格言と、ギルガメシュを励ますエンキドゥ。

第五の書板

1 森に到着した2人。フンババとの対話。
2 シャマシュの手助けでフンババに勝利する2人。命乞いをするフンババ。
3〜4 フンババを殺すよう進言するエンキドゥ。
5 ついに殺されてしまうフンババ。
6 木を切り倒す2人。

第六の書板

1 ギルガメシュに言いよるイシュタルと、拒絶するギルガメシュ。
2 ギルガメシュの拒絶が続く。激怒するイシュタル。
3 イシュタル、父神アヌに泣きついて天牛を作ってくれるよう頼む。
4 暴れまわる天牛。
5 2人は強力して天牛を撃破する。
6 ギルガメシュを讃える人々。一方、エンキドゥは夢を見る。

第七の書板

1 神々の会議。フンババを殺したため、エルキドゥは死ななければならない。
2 ニップル神殿の扉に当たるエンキドゥ。
3 狩人とシャムハトを呪うエンキドゥ。シャマシュが宥め、鎮める。
4 エンキドゥは冥界を見る。
5 欠損
6 床に伏し、弱っていくエンキドゥ。

第八の書板

1〜3 ギルガメシュの哀悼
4〜5 エンキドゥの埋葬?
6 欠損

第九の書板

1 死が恐ろしくなったギルガメシュはウトナピシュティムの元へ行こうと決意する。
2 マーシュ山(麓が冥界に接していると考えられた)に着いた時、蠍人間に出会う。
3 蠍人間いわく「ウトナピシュティムに会いに行く道はない」。
4 蠍人間の言葉に従い、マーシュ山に向かう。
5 1日歩き続けて、シャマシュの居場所に出る。
6 ?

第十の書板

1 酌婦シドゥリとの出会い。
2 エンキドゥを失った悲嘆を語るギルガメシュ。シドゥリいわく、ウトナピシュティムの元へは「死の水」を渡らなければならない。彼女の示しに従い、舟師ウルシャナビの元へ行く。
3 ウルシャナビとの問答。
4 死の水を渡るギルガメシュ。ウトナピシュティムと出会う。
5 悲嘆を語るギルガメシュ。
6 ウトナピシュティムが人間と死について語る。

第十一の書板

ウトナピシュティムの語る洪水神話。
ウトナピシュティムの助言により、ギルガメシュは深淵にて若返りの薬を得るが、蛇に奪われてしまう。
その後、ギルガメシュがウルクに戻り、城壁を建造したことが、冒頭の賛歌によって示される。

第十二の書板(番外編のようなもの)

「プック」と「メック」を冥界に落としてしまい、嘆くギルガメシュ。
見かねたエンキドゥが冥界に取りに行くが、ギルガメシュの助言を守らなかったため、冥界に囚われてしまう。
ギルガメシュは神々に泣きつく。エアの助けもあり、ギルガメシュはエンキドゥの死霊と再会する。エンキドゥは冥界の様子を語る。

個人的に感じた「ここがエモい」ポイント

ギルガメシュの見た夢

ギルガメシュは、エンキドゥと出会う直前に2つの夢を見ます。
その夢の中でエンキドゥは、1つにおいては「アヌの結び目のようなもの(星?)」、もう1つにおいては「斧」の姿でギルガメシュの前に現れます。

「母よ、わが夜に1つの夢を見ました。
天の星が現れて来ました。
するとアヌの結び目のようなものが、わが上に落ちて来たのです。
それを持ち上げようとしても、わたしには強すぎました。
それを移そうとしましたが、持ち上げられませんでした。
ウルクの国〔人〕がその前に立っていました。
ウルクの国〔人〕がその前に集まっていました。
その上に[欠文]
[欠文]人々は彼と会いまみえ、
人々は乳飲み子にするように彼の足に接吻していました。
女のようにわたしはそれを抱き、それに愛を注ぎました。
[欠文]わたしはそれをあなたの足元に置きました。
あなたはそれをわたしの対向者とされたのです。」

 第一の書板6
pp.18ー21 月本先生訳

相談を受けたニンスンは、夢に登場した「アヌの結び目」と「斧」は、いずれ来る友のことであるとギルガメシュに告げます。
ロマンチックですねぇ……

エンキドゥの言動が物騒すぎる

ちょっと笑ってしまったポイントです。エンキドゥが物騒すぎる。
以下は、天牛を殺された恨み言を呟いたイシュタルに対し、エンキドゥが行った衝撃の行動。

天牛の腿を引き裂き彼女の顔に投げつけて言った。
「お前も征伐してやろう。これと同じように
お前にもしてやろう。
そのはらわたをお前の脇にぶら下げてやろう。」

第6の書板5,13-15
p.78  月本先生訳

女神イシュタルに対して、かなりえぐいこと言ってます。
どんだけ嫌いだったんだよ……。

そして以下は、命乞いをするフンババを前にしての言葉。

「友よ、[香柏の]森の守り手なるフンババを[捕らえよ]。
彼を絞り上げよ。彼を撃ち殺せ。
彼を粉々にして、[抹殺せよ。]」

第5の書板3,w8-w10
p.61  月本先生訳

怖いんだが!?
エンキドゥさん、中々はっきりした性格に描かれているように見えます。

人間であることはいつか死ぬことでもある

「エンキドゥ、パンをお食べ。
それが生きるしるしです。
ビールをお飲み。それが国のならわしです。」

古バビロニア版 P 3 12-14
p.178 月本先生訳

「国のならわし」「死ぬ運命」とも訳せる。おそらく意図的な語呂合わせ”(p.178)

ここ、なんだか物凄く胸が熱くなった場所です。
パンを食べることもビールを飲むことも、人間性の獲得であるのに対して、その中で生きること、そして死の運命が暗に示されている……。
色んな神話で人間を「死すべきもの」とか描写してるのを見た記憶がありますが、まさにその価値観だなぁと。

ギルガメシュの人生観を変えるエンキドゥの死

古バビロニア版にて、ギルガメシュはフワワ討伐前、

「友よ、誰が天に上れるというのか。
シャマシュと共に、永遠に[住む]のは神のみ。
人間の〔生きる〕日々は数えられている。
彼が成し遂げることはすべて風に過ぎない。
あなたはここにおよんで死を恐れるのか。
あなたの勇猛果敢さは何だったのか。
あなたの前を、わたしが行こう。
あなたは口で叫べばよい、『近づけ、ひるむな』と。
もし斃れたら、わたしはわが名をあげるだろう、
『ギルガメシュは、かの恐ろしいフワワと闘いを交えたのだ』と。

古バビロニア版Y 4 5-14f
pp.190-191 月本先生訳

とエンキドゥに語っていることから、かなり諸行無常な人生観……というか、人間が神とは違い永遠には生きられないことを悟っていることがわかります。
上のような感覚を持っていたのにもかかわらず、エンキドゥを亡くしたことで彼は限りある生を恐れるようになり、結局永遠の生を求めて旅立つことになります。
エンキドゥを亡くした悲しみがギルガメシュにとってどれほどの物だったのか、窺い知るような気持ちになります。

今回主に読んだ本と参考文献↓

月本昭男『ギルガメシュ叙事詩』1996年,岩波書店。

たまたま図書館にあったのを読んだのですが、著者の月本先生はこの本よりも直近で2012年(新装版は2019年)に『ギルガメシュ王の物語』を出してらっしゃるようです。
今度新しい方も読んでみよー!

日本語版Wikipedia

叙事詩の失われた断片が発見される

ところで、少し前(2015年)にギルガメシュ叙事詩の新しい断片が発見されたというニュースがありました。
なんでもそうですけど、現在進行形で史料が見つかるの、めちゃめちゃロマンありますね……!!

Lost ‘Epic of Gilgamesh’ Verse Depicts Cacophonous Abode of Gods
https://www.livescience.com/52372-new-tablet-gilgamesh-epic.html

上記ニュースによると、今まではわからなかったことが新たにわかるようになったそうで。

エンキドゥとフンババ(フワワ)が子どもの頃に友人だったということが示されており、彼を殺した後、少なくともエンキドゥは美しい森を破壊したことに対し、少し良心の呵責を感じていた。

まって、なにそれ、しんどいんですけども……。

ギルガメシュ叙事詩の洪水タブレット
by カエレバ
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